2000 04 16

もてる男

まだ大学生だった頃のことだ。

「決めた」

「何を?」

「もてる男になる」

「あぁそう。 まぁいいんだけどさ。 で、どうやって?」

「やっぱり会話じゃないかなぁ、会話」

「そう言えば、俺達の会話って、理系の男にしか受けないようなのばっかだな」

「でしょでしょ?」

「クッキーの箱に対する有効容積比なんて言われても、なぁ」

「だから、そんなんじゃなくて、もっと文系の女に受けそうなの」

「具体的には?」

「……」

「出てこないのかよ。 駄目じゃん」

「どうすればいいと思う?」

「知るかよ」

「なんか考えてよ」

「何で俺が?」

「そのままじゃもてないよ?」

「お前の問題だろうが。 しかし文系の女に受けそうな話って言われてもなぁ…」

「んー…」

「あ、秋元康なんていいんじゃないか?」

「秋元康かぁ」

「デブを補うために会話を磨いてますって感じがしねーか?」

「あ、そうか。 じゃあ秋元康を見て勉強するよ」

秋元康の会話を見て勉強するって結論が、既に駄目駄目なんじゃないかって気がするが。 その後、少なくとも3年間は、そいつはもてる男にはならなかった。 就職してからどうなったのかは知らない。

自分のを読み返してみた。 学生の頃の 「理系の男にしか受けないようなのばっかり」 から全然成長してないような気がする。 贔屓目に見ても、あんまりもてそうにはないな。 こんなことでいいんだろうか。 まあいいか。