2000 08 28

自分はやらない前提で

ちゃんと覚えているのは、高校のときの性教育。 それ以外は、何かやった記憶はあるのだが、何をやったのかはすっかり忘れてしまった。 なんで高校のときだけはっきり覚えているのかと言えば、盛りのついた年頃だと言うこともあるが、インパクトが強かったからだ。

あのとき、講演に来た産婦人科の女医が、見せたもの、語ったこと。

犀の交尾

体の器官や避妊具の説明には人体図だったのに、性行為の映像には犀の交尾。 あまりの意外な展開に、涙が出るほど笑った。

出産の瞬間

実際に子供が出てくるところを、このとき始めて見た。 これを、感動的なこととして伝えようとしていたらしいが、俺には気持ち悪いだけだった。 母親の体があんなに大きく広がるのも、そこから出てきた生き物が血まみれで泣き声を上げるのも。

病院で本当にあった、中絶にまつわる話

妊娠したと言ったら、堕ろすために腹を殴られたり蹴られたりして、中絶どころか内臓破裂してしまった女子高生の話。 手術後、ある程度回復してきた頃に初めて病院に来た彼氏は、まだ回復し切らない彼女に向かって 「やらせてくれ」 と言ったんだそうだ。

中絶手術がうまく行かなかったか、他の病気になったかで、腹に穴をあけて管を挿していた女子高生の話。 この子の彼氏も、手術後に初めてやってきて、管を挿したままの彼女を屋上に連れ出してセックスして帰ったのだとか。

「どうして断らないの?」 と訊くと、皆同じく 「断ったら嫌われるから」 と答えるのだそうだ。 「それでも好き」 なのだと。 「男は思い遣りを、女は断る勇気を、持ってください」 との女医の言葉を、なんだか腹立たしい気持ちで聞いていた。 その腹立たしさには、多分羨ましさも混じっていて、俺も十分にクズなのだが。

最近のこと。 テレビをつけると、妊娠中絶の説明をしていた。 「妊娠4ヶ月を過ぎると、そのままでは子宮から出せないので、頭を潰して掻き出します」 と、そのための器具を胎内に入れて、 「このぐらい成長していると、胎児も逃げるんですよ。 ほら、動いているでしょう」 と、超音波診断の画面を指差して説明しながら胎児を追い詰めて…

中絶手術のとき、男はどこにいるんだろう。 胎児を潰し殺すのは、医者ではなく男がやるべきではないか。 殺す瞬間の感触を、男はその手に刻む必要があるのではないか。 そんなことを、テレビを見ながら考えていた。