2000 12 10

俺の知らない世界

電話機を買おう。 そう思い立って、ムラウチ電気へ行く。 天気がいいので、遠回りして歩いていく。

木陰に停めたタクシーのなかで、おばちゃん運転手が雑誌を読んでいた。 休憩中なのだろう。 おばちゃん推定40歳。 この業種では若い方ではないかと思う。 なんだかずいぶん熱心に読んでいる姿に、何を読んでいるんだろうと気になって、横を通るときにちょっと覗いてみた。 広げたページの見出しが、 「男のアナルを征服する」 うーむ… 征服するのか。 人の趣味に口を出す気はないのだが、そうか、征服するのか。 実際に、もういくつか征服したんだろうか。 したかもしれないな。 それも、合意の上のことじゃなかったりして。

夜遅く、人気の無い方向を告げた若い男に、にやりとするおばちゃん。 十分に人気の無くなったところで、さらに脇道に入る。

「あれ? 道を間違ってません?」

「いいえ、いいんですよ、これで」

無線機の横のボタンをプチ。 ガスが後部座席に噴き出して、意識朦朧とする男。 そこにカメラを手にしたおばちゃんが…

おっと、読んでる雑誌、と言うか、ページだけで悪者にしてしまうのは問題有りだな。 本当は正義の味方かもしれない。 自らの欲望のためではなく、法で裁けぬ誰かの恨みを晴らすために。 そう、おばちゃんは現代の必殺仕事人。 今夜もタクシーは、性懲りも無くセクハラを繰り返す男を乗せて、人気の無い道へ。

「あれ? 道を間違ってません?」

「いいえ、いいんですよ、これで」

無線機の横のボタンをプチ。 ガスが後部座席に噴き出して、意識朦朧とする男。 そこにカメラを手にしたおばちゃんが…

「セクハラに、女が流した涙の御代、あたしが代わって、頂きましょう」

人呼んで、アナルのお銀。

なんて下らない想像しているうちに、ムラウチ電気に到着。 パソコン売り場の入り口に、怪しい人だかり。 カメラを持ったおっちゃん率がやけに高い。 どうやらアイドルのイベントらしい。

「では登場してもらいましょう。 世界初のITアイドル、リンクリンクリンクでーす!」

ITアイドル?

司会のお姉さんの紹介で出てきたのは、見るからにB級の3人組み。 でも、せっかくだから、歌うのをちょっと見てみた。 その3人、歌って踊りながら、ちゃんとカメラを持っている人に順番に視線を向けていて、アイドルとしての訓練を感じさせる。 しかし、そんなことでB級貧乳3人組みの評価が上がるはずも無く、歌も1曲聴いただけでお腹一杯になってしまった。

何にでもITを付けるのが流行りだけど、ITアイドルとはね。 ネットアイドルとはまた違うってことか。 家に帰って検索してみたら、ヒットしたよ、Link Link Link が。 (俺的)水面下で、いろいろ活動しているらしい。 せっかくITを付けるんだったら、森総理公認アイドルぐらいは言ってみればいいのに。 ま、公認する方も、される方も、あんまり嬉しくないだろうけど。

電話機は、気に入ったのが無くて買わなかったのだった。

神社の森

神社の森には、独特の、何かがいるような雰囲気がある。 その「何か」と遭うかもしれない時間の始まり。

月

なんか間抜けだな。