2002 07 10

問の意図

電車の中、妙に肌の艶がいい小太りの中年と、ぼさぼさ頭のひょろりとした30代前半風が話していた。 と言うか、小太りが一方的に、仕事の愚痴や自慢やなんやかんやを語っていた。 ソフトウェア関係の仕事をしているようだ。 その小太りの、気になった愚痴の一つが、トラブルの連絡があったときの話。

よくさぁ、 「動かないんですけど」 って電話がかかってくるだろ? あれ、困るよな。 特に相手が素人のとき。 動かないって言われたって、それだけじゃ状況が何もわからないんだよな。 何をしていたときに動かなくなったのか、入力した値はどんなものだったのか、こっちが知りたい情報は何も無しだし。 で、 「それだけじゃ判らないんで、もっと詳しく教えてください」 って言ったら、 「ちょっと前、いつも入力している一覧の数字を入力してたら、急に入力できなくなったんです。 マウスが動かないんです」 なんて、やっぱり全然役に立たないんだよな、これがまた。 そーゆーことじゃないっての。

詳しくない人からのトラブルの連絡は、確かに小太りの言う通り、状況理解に役立つ情報は少ない。 「それだけじゃ判らないんで、もっと詳しく教えてください」 と言いたくなる。 でも、それをそのまま言っちゃ駄目だろう。 相手がこちらの求めている情報を出せないのは、何がこちらに役立つ情報なのかの判断ができないからだ。 どう言ったらいいのかも判らないから、とにかく動かないのだと伝えて、どうすればいいのかを訊いてくるのだ。 そんな相手に対して自らは何の説明もしないで、そのくせ自分が望む答えが得られないと苛つく。 求めている情報がどんなものか相手が理解してくれることを、当然のように相手に期待するその態度。 せっかく小太りの中年になったのに、中身は甘ったれたガキのままか。

トラブルの連絡を自分が責められているように感じて、反発して、その反発を相手の言い方に向けているのかもしれない。 本当は大した問題じゃない、ちゃんと説明してくれればすぐに解決できるのに… なんて、自分のせいかもしれない問題を矮小化させたいのかもしれない。 などなど、自己防衛の自動的な反応もあるのだろうが、それはそれとして、 「求める答えが得られないのは、問い方が拙いからかもしれない」 ということには、俺も気をつけなければいけないな。 問の意図は判り易く。 あ、問の意図って、反対から呼んでも問の意図だ。

台風6号通過中。