2002 09 16

拉致の1

小泉君が北朝鮮に行くことを受けて、 「一人とか二人とか、中途半端は絶対駄目。 拉致された全員を日本に返させること。 それができなければ無意味」 なんて言ってる国会議員がいた。 評論家もいた。 名前は忘れたけど、俺が見た範囲では5人ぐらい。 拉致された人の家族も、 「中途半端なことを言うようなら、机を叩いて席を立って欲しい」 なんて言っていた。

これは、皮肉でも嫌味でもなく単純な興味なのだが、 「中途半端なことを言うようなら、机を叩いて席を立って欲しい」 と言う被害者家族は、どんな状況を想定して発言しているのだろうか。

被害者家族は、被害者家族だからこそ、他の被害者家族の気持ちもよく判るだろう。 仮に(と言ってもほとんど無い可能性だと思うが)金君が、 「俺が知らないうちに、先走った手下が拉致ってたらしくてさ。 一人見つかったから連れて帰ってよ」 と、拉致された誰かを連れてきたとして、それが自分の家族ではなく、一緒に拉致を訴えつづけてきた他の家族だとしたら、 「机を叩いて席を立って欲しい」 と言うだろうか。 言わないだろうと思う。 「その人だけでも連れて帰ってあげてほしい」 と言うのではないかと思う。 つまり、 「中途半端なことを言うようなら」 と言うその中途半端でまっさきにでてくるのは自分の家族であると(無意識のうちに?)思っているのだな。 意識下の部分を補うと、 「(他の家族が見つからないなんて)中途半端なことを言うようなら、(自分の家族がすぐに帰ってくることは我慢するから)机を叩いて席を立って欲しい」 である。

というのが、わりと 「いい人」 であると想定した場合。 或いは、 「(自分の家族が見つからないというような)中途半端なことを言うようなら、(他の家族が見つかったとしても)机を叩いて席を立って欲しい」 かもしれない。 ひょっとすると、拉致された家族が生きている・帰ってくるということが想像できなくなっているのかもしれない。

まあとにかく、拉致された人の家族が言うのはいいんだけど、それ以外、特に国会議員なんかが 「全員で無ければ駄目」 なんて言ってるのを見るとね。 自分達がこれまでできなかったことをしようとする人への嫉妬と、 「今まであんた達は何もしなかったじゃないか」 という責めを封じるための言い訳(開き直り風味)に聞こえるよ。 こーゆー人たちは、もちろん、全員が帰ってくるなんてちっとも思っていない。 だからこそ、最も上手くいった場合を、まるでそれが最低限の義務であるかのように言うのだ。 成果をより小さく評価するために。 で、自分達は準備中。 中途半端なことをせず、全員を帰国させるために、永遠に準備中。