2003 01 19

タイ:熱風

現地の気温は30度ぐらいなのだが、こっちの気温は3度。 寒い。 この寒さでは、迷う余地無くシャツも長袖だよなぁ…と、まだ日が昇らない朝の6時半に、それでも気持ち薄着で家を出た。

空港に着いたのは、待ち合わせをちょっと遅れた9時10分。 既に疲れているのに、これから更にエコノミークラスに7時間。 乗る前からうんざりしていた飛行機だが、俺の席は幸いなことに最前列の通路側だった。 思う存分足を伸ばせるのが本当に嬉しい。 その伸ばした足の上、つまり通路の突き当たりに、ちょうど大人の肩ぐらいの高さにスクリーンがぶら下がっていた。 スクリーンの後ろにトイレがあって、トイレに行く人はこのスクリーンの下を頭を屈めて通らなければならない。 で、通る人が結構頻繁に頭をぶつけるのだな。 不思議なことに、トイレに入るときはちゃんと頭を下げてよけているのに、出てきて席に戻るときには頭をぶつけてしまう。 トイレに入るときは自分の後ろに十分な空間があるが、トイレから出たときはスクリーンまでの距離がほとんど無くて狭い。 そこを、入るときと同じようなつもりで頭を下げるから、間に合わずにぶつけてしまうのだろう。 すっきりしたことによる油断もあるのかな。 何れにしても野生動物ならありえないような間抜けさ。 人間ってのは、空間把握能力がかなり退化してるんだなぁ…と、ぼんやり考えていたら、通路を挟んだ隣に座っていた連れが言う。

「スクリーンをここに置くのは、ちょっと問題ですよね」

「うん。 でも、他に場所が無いよなぁ」

「うーん、そうですねぇ」

「簡単に角度が変わるのは、ぶつかることを想定して、怪我しないようにしてるのかもね」

「あ、それはそうかもしれないですね」

「でも、行きはよけるのに帰りにぶつかるのは、ちょっとアホっぽくないか? ぶつかる方も駄目だろ」

「ははは、確かに」

んが、そいつ、トイレに行こうとして、行くときに頭をぶつけていた。 いきなりぶつけて駄目っぷりもより一層なのだが、それが却って 「構造に問題がある」 という言葉に説得力を持たせるのだな。

そんなこんなで着いたタイのバンコク。 時差2時間の現地は4時。 機内から出た瞬間に熱風。 殴られたように暑い。 飛行機から空港ビルまでのほんの数分で、いろんな物が嫌な感じに温まってしまった。

そしてホテル。

ホテルの部屋の1

「安ホテルの上」 という ARISTON HOTEL は、一泊 700Bt ( = 2100円 ) で新聞と朝食付き。 確かに安い。 そして、安いだけのことはある。 ベッドサイドのラジオは電源から入らないし、時計はもちろん止まっている。 ベッドの幅が広いのはいいが、丈が足りない。 普通に枕に頭を乗せて足を伸ばすと、踵がちょうどベッドの端に来るのだ。 胎児のように丸くなって眠ろうか。

ホテルの部屋の2

お世辞にも綺麗とはいえない風呂。 シャワーを浴びていると、突然ゴゴゴとものすごい音がするのは、たぶん水道のモーターだろう。 音は凄いが、水の出はしょぼい。 水質を期待してはいけない。 振り向くとドアが黴だらけ。

予想よりも襤褸かったが、安ホテルってのは皆こんなもんなのかもしれない。

部屋で一休みした後、食事をしに連れと出かけたタイの街は、バターと香辛料の混ざった臭いがした。 連れが言うには、 「この臭いはまだましな方」 なんだそうだ。 雨季になると、もっと強烈な臭いがするらしい。 食事は、サムライという日本料理店。 あまり美味くはなかったな。

ホテルに帰って窓の外を見ると、ちょうど満月。 これからおよそ1ヶ月ってことは、日本に帰るのはこの月がまた満月になる頃か。 先は長いなぁ。