2003 04 14

バランス

「米英がイラクのほぼ全土を制圧した」 とのニュースに感じるのは、不謹慎ではあるが、呆気なさである。 何だか物足りなくて、ちょっとがっかりなのである。 前回の湾岸戦争のときもにも感じたこの呆気なさを、今回はより強く感じているのである。 もちろん、戦争なんてとっとと終わるに越したことはない。 泥沼化は、ただ死者を増やすばかりで、関係する誰にとっても最悪のシナリオだと思う。 そう思う一方で、この状況を見て、 「呆気ないなぁ」 と思ってしまうのである。

もっと泥沼であって欲しかった

はっきり言ってしまえば、そーゆーことだ。 戦争が、国同士の問題解決の手段として認められる場合もあるということを、俺は知っている。 もちろん、戦争なんてしないに越したことはないが、それ以外の政治的な手段では解決しないことも、実はけっこうあると思っている。 だが、そんなことの解決手段として戦争が認められるのは、それなりの手続きを踏むからだ。 そしてその手続きが、国連での承認である。 国連そのものの成り立ち、国連内の政治的バランスの偏り、いろいろ疑問はあるが、それでも国連での承認のみが戦争の正当性を保証するものなのだ。

今回の米英のイラク攻撃は、この手続きを踏んでいない。 いわば私刑である。 そういった、力に奢ったごり押しを、俺の中の小市民的なバランス感覚が拒否するのだ。 やればもちろん勝つだろうが、不当な戦争なのだから、あまりあっさり勝って欲しくない、と。 金持ちの家庭が幸せであって欲しくないみたいな…って、そりゃちょっと違うか。

バグダッド市内では、いろいろ暴動が起きているらしい。 暴れているのは、イラク民間人らしい。 メソポタミア文明の遺物が、博物館からほとんど根こそぎ略奪されたらしい。 警備はどうなっているんだと記者に突っ込まれた米政府高官は、 「暴動を起こす自由もある」 なんて答えたらしい。 何だかなぁ…

ニュースステーションでは、久米宏が、 「貧民には取材ができなかったことを、今日まで知りませんでした」 と言っていた。 本当かな。 知らないはずはないと思うのだが。 本当は、これまで散々 「戦争が泥沼化している」 と言ってきたことが、厳しい取材規制による判断ミスなのだと言い訳したいんじゃないかと、俺には見えてしまう。 それはもちろん、俺の中のバランスからの見方でもあるんだけど