2003 04 28

加速する時間

たいてい店の外の雑誌をパラパラ立ち読みする程度で、滅多に中に入ることがない本屋に、先週末、久し振りに入った。

何年か前、この本屋に入ったときに、ちょっといい感じの娘が店番をしていたことがある。 さらさらの長い髪に、ちょっとそばかすのある白い肌。 すっきりした目元。 20代前半といったところか。 俺が買った雑誌を袋に入れるときに、持っていたCDを見て、 「それも一緒に入れますか?」 と訊いた声が綺麗だった。

くだらないことだが、その本屋に入るときはいつも、またあの娘がいればいいなと思いながら入る。 いたらどうするって訳でもないんだけど、もしいたら、何となく嬉しいんじゃないかと思うのだ。 が、まあ、滅多にいないのだな。 先週末もそう。 レジには、俺より少し年上といった感じのおばさんが俯いていて、 「あ、ハズレか」 などと失礼なことを思いながら、仕事関係の雑誌をレジに差し出した。

と、 「ありがとうございます」 と、聞き覚えのある綺麗な声。 あれっと思ってよく見ると、おばさんだと思ったのはその娘だった。 妙にくすんで傷んで見える髪に、腫れぼったい目蓋。 目尻には小皺。 赤らんだ顔に、虫刺されの跡のような赤いぽつぽつが目立つ。 僅か数年でどうしてここまで劣化してしまったんだろう? 病気でもしたんだろうか? とちょっと心配になる一方で、何だかがっかりした。

今後、その本屋に入るとき、俺はたぶんもう何も期待しないと思う。 だから何が変わるってこともないんだけど。