2003 08 16

人込み

会社は今週は盆休みなのだが、俺は休み無し。 いつもより余計に働いて、ずっと家に帰れなかった。

深夜にはアジア系外国人をちらほら見るばかりの国際展示場なのだが、このところやけに人が多い。 それも妙に偏った、オタクと呼ばれるような人たちが。 「○○がよかったのは、△△までだよね。 ××からは商売に走って堕落したって言うかさぁ」 などと、作家(?)は呼び捨て、作品名は短縮で、熱く語っている。 食事に行くと嫌でも目にするそいつらに、 「何かオタク向けのイベントでもあるのかなぁ」 なんて、ぼんやり思っていた。

そして今日。

いつもなら渋谷を過ぎてがらがらになる電車が、いつまでたっても満員。 しかも満員を構成する人々が、いちいちでっかい荷物を持ってやがる。 雨でびしょびしょに濡れたリュックサックを押し付けやがる。 そいつらが国際展示場で一斉に降りて、ホームがまた大渋滞。 駅構内にはあらかじめこの事態を予想していたかのように、遠回りな誘導路が設けられていて、改札までいつもより余計に歩かされる。 それだけでもう十分びっくりしていたのだが、驚くのはまだ早かった。 駅を出たらもう人、人、人。 一度にこんなに大勢の人を見たのは、俺の人生初めてじゃないだろうか。 駅前の広場(文字通り、かなり広い)を埋め尽くして、ぎっしり人が並んでいる。 遥か彼方まで行列が続いている。 結構強く振る雨の中を、寒そうに肩をすくめながら。
黄色い合羽を着て、メガホンで何やら指示を出している男に訊いてみた。

「この行列は何? 今日は何があるの?」

「コミケです」

ああ、コミケか。 今を遡ること15年の昔、同級生が 「行って見るといいよ。 見方が変わるから。 絶対面白いから」 と力説していたあのコミケか。 数日前から屯していたオタク連中も、この日のための前乗りだったんだろう。 ディープな世界にどっぷり漬かってしまえば面白いのかもしれないが、しかしこいつらと一緒にされるのはちょっとなぁ…とりあえず邪魔だなぁ…と、興味半分苛々半分で仕事場に向かった。

3時。 新宿に打ち合わせに行くために駅に行ったら、コミケ帰りのオタクどもで大渋滞。 駅が。 切符を買うのに30分の行列。 切符を買った人が電車に乗るのに、また30分の行列。 なんだそれ。 「コミケ帰りの渋滞で遅れます」 と電話しながら思うのは、何で関係ない俺が我慢しなきゃいけないのかってこと。 今日のようなコミケとか、もっと頻繁にある野球なんかでもそうだが、何で関係ない人までも帰りの混雑を我慢しなきゃいけないのか。 イベント帰りの奴らだけを規制して、ちょっとづつ電車なりバスなりに乗せるようにすればいいではないか。 我慢するのは、さっきまで楽しんでいた奴だけでいいではないか。 おい、おっさん、横入りするな。 くそがき、びしょびしょのかさを押し付けるな。 前と後ろのデブ、俺をはさんで盛り上がるな。 うるせぇよ。 もう死ね。 いっそみんな死んでしまえ。

一週間ぶりに家に帰ってきたら、先週の日曜日に炊いた米がカピカピに黄色くなっていた。