2003 10 09

決意

江戸東京たてもの園に行ってきた。 入り口を入るといきなりスズメバチ注意の看板。 そして遠足らしいガキ共の集団。 どうなることかと思ったが、入り口以外ではスズメバチにもガキにも会わず、のんびり建物を見ることができた。

建物はいい。 特に古い日本の家がいい。 俺は、寺や神社を見て歩くのが好きなのだが、それは多分、寺や神社と言うよりも古い日本の建物が好きなんだろう。 昼でもほの暗いところがあっちこっちにあるようなね。 祖父の家を思い出すからかもしれない。

父方の祖父の家。 田舎の農家は何処でもそうだと思うが、風呂が離れている。 夜、風呂に入るのに、一歩外に出ると本当に真っ暗で、しかし目が慣れるまで闇の中にじっと立っていることもできず、手探り足探りで風呂への道を進む、あの堪らない緊張感。 風呂場に入ったら入ったで、窓の外に何か、人ではない何かがいそうで、もちろんそんなものは見たくなくて、それでも視線は吸い寄せられるように僅かに開いた窓に向かって、そんなときに限って、窓辺で鳴いていた虫たちが、まるで誰かが近付いて来たかのようにぴたりと鳴き止むのだ。

母方の祖父の家。 よせばいいのに叔父の部屋に入って、積み上げてある少年マガジンからわざわざ 「後ろの百太郎」 なんかを選んで読み耽って、ボーンボーンと古臭い時計が鳴るのに飛び上がるほどびっくりして、はっと見回せば部屋の中はすっかり暗くなっていて、障子の低い位置についている磨りガラスに、土間の黒しか無いはずのガラスに、小さな人影がゆらゆらしているのが見えたような気がして、怖くなって炬燵にもぐりこむと、奴等は素早く炬燵布団のすぐ外側に押し寄せて、俺が潜むコタツの周りをゆっくりと回るのだ。

そんな、今となっては懐かしいばかりの恐怖。 仏壇や神棚や床の間の隅っこに潜んでいた、小さな恐怖をね。 思い出してしまうのだよ。

旧自証院霊屋

古いものばかり目にするので気付かないが、神社や祠ってのは、実は結構カラフルなのだ。 これは旧自証院霊屋。 屋根と土台の赤が、壁や柱の黒を引き立てる。 柱の上端によくあるのは龍だが、ここでは象。 飾る動物は違っても、形式は崩せないようで、象もきちんと阿吽になっていた。

西川家別邸

西川家別邸。

古い日本家屋に部屋が多いのは、家の物理的な構造を強くするという意味もあるのだろう。 しかし、そんな意味は置いといて、陰がたくさんあるってのが、子供には嬉しいのだ。 祖父の家や親戚の家などの古い日本家屋に行ったときには、必ずかくれんぼをしたものだった。 あっちこっちにある陰に潜んで息を殺す。 しかし、あまり長く潜んでいると、何だかちょっと怖くなってくる。 そんな陰。

路面電車

今ではもう殆ど見なくなった路面電車。 車内にあった路線図からすると、かつては都内全域をカバーして走っていたらしい。

幅が狭い、椅子が小さい、吊り輪が低い、等々、何もかもが小ぢんまりしているのは、当時の人々の体格に合わせたものだろう。 この電車内における俺の視点は、今の電車内に換算するなら身長180m相当かな。

武居三省堂

武居三省堂。 書道用品店らしい。 壁一面が小さな引き出しになってるのがいいね。

子宝湯

映画 「千と千尋の神隠し」 の舞台は、この子宝湯がモデルになったとのこと。 俺は映画を見ていないのだが、ポスターやCMで見たのを思い出すと、確かに似ている。 けどまあ、似ているかどうかはどうでもいいことなんだよね。 気になるのは、中がどうなっているか。 俺は、覚えている限りでは、銭湯に入ったことが無いのだよ。

展示物の一つでもあるkgに貫が併記してある体重計に乗って、自分の体重に愕然とした。 ショックから立ち直れないでいたら、俺の後に乗った綺麗なお姉さん(本当に美人だった)も、体重計に乗って 「あっ! うそっ!」 と言っていた。 どうやら、実際の体重よりもちょっと多く表示されるらしい。 だが、そんなのが何の慰めにもならない俺の惨状。 ちょっとダイエットしよう。 ちゃんとダイエットしよう。

高橋是清邸

喫茶店も兼ねている高橋是清邸で、コーヒーを飲みながら一休み。 程よく茂った庭木の作る光と影が、なかなかいい感じ。

前川國男邸

前川國男邸は、昭和17年に建てられたということで、中の家具も今に繋がるものが多い。 もっとも、この電話とテレビは、だいぶ後になってこの家に来たものだと思うが。

電話は、受話器送話器が独立してロボットの顔のようになっていた最初期のものから、黒電話の直前まで進化した状態。 人で言うなら、ネアンデルタール人ぐらいか。 ほとんど黒電話に残る昔の名残が、手でぐるぐる回すやつ。 つまり、ここから数字版とセットのダイアルになるのが、電話における最も大きな発想の転換だったってことか。

人形

江戸時代の農家だか町屋だかにあった人形。 建物よりもだいぶ新しい物だと思うが、実際どうなのかは判らない。 半開きの口に、歯まで作られていた。

ところで、田中真紀子は、無所属で立候補するのかな。 出れば当選するような気もするけど。