2004 03 05

ハチミツ

金曜日は残業無しの日。

「会社の売店はさぁ、やっぱり駄目だよな」

「どうかしたんですか?」

「このくそ寒いのに、ホットが無いんだよ」

「それ、買ってきたのはホットじゃないんですか?」

「一応ホットなんだけど、温かくないんだよね」

「ぬるま湯ですか」

「むしろぬるま水。 これ、多分さっき加熱始めたばっかりだよ、昨日の売れ残りに」

「それはちょっと駄目ですね。 飲みたくないかも」

「だろ? しかもそもそも俺が飲みたかったのは、これじゃないんだよ」

「何がよかったんですか?」

「ハチミツレモン」

「はぁ…」

「昨日も一昨日も無かったから、もう仕入れる気無しなんだよな、きっと」

「人気無いんですかね」

「俺は毎日買ってたのに… って、俺しか買ってなかったのかな?」

「それはあるかもしれないですね」

「そんな不人気を毎日買ってる俺は、店員から『ハチミツレモンの人』とか呼ばれてたりして」

「ははは」

「もっと省略して『ハチミツ』とか」

「実際ありそうですね」

「で、『ほらほら、さっき来た人がハチミツ。 全然似合わないよね』なんて言われてんだよ」

「もう断定ですか」

「うん。 『どうせハチミツしか買わないんだし、ハチミツレモンはもういいよね』って」

「本当にそれで販売中止は悲しいですね」

「想像だけで腹立ってきたな。 この気持ちを何処に向けりゃいいんだ… あいつか」

「なんだか迷惑な妄想ですね」

「迷惑してるのは、ほぼ一方的に俺なんだけどね。 はぁ… 仕事でもするか」

「そうそう、今日はUAE戦ですよ」

「あ、そうか。 じゃあ早く帰らないと」

で、家に帰ったのは2時過ぎ。 とっくに終電は無くて、タクシーで。