2007 01 19

回復傾向

一日たって、父は更に元気になっていた。 俺が寝ている間に、日課だった朝の散歩に出ていたりとか。 食事もしっかり摂っている。 手の震えは殆ど無い。 廃車の手続きも、自分で、なじみの販売店に電話をしていた。 もっとも、これについては、意識があいまいなときに一度電話していて、明日取りに来て貰うことにしていたらしい。 本人はそのことを全く覚えていなくて、電話したときに向こうから言われて、慌てて月末に変更してもらっていたが。 ちなみに月末が車検の期限。

車は、母はもう問答無用に廃車にしろと言っているが、俺は、実はちょっと迷っていた。 と言うのも、足がなくなると、家に引きこもってしまうのではないかと思ったから。 それでまた塞ぎ込んでしまうのではないかと。 車に未練があるようだし。 でも、危ないのも確かなんだよな。 目も悪いらしいし。

なんて俺たちの心配をよそに、父は車に乗って出かけていった。 医療費明細とやらを受け取りに、病院を3軒回るんだそうだ。 一緒に行こうと言ったのだが、それぞれの病院で結構待つことになるから、一人でいいと断られてしまった。

昼ごろに帰ってきた父と、今度は一緒に買い物に行った。 ついでに電気屋によって、デジカメと携帯を弄り回した。 デジカメは、レンズの出ないやつが気になるらしい。 携帯は、画面の大きいやつが気になるらしい。 その後、小腹が減ったので、店内レストラン街でうどんを食った。 二人とも天婦羅うどん。 なのだが、父は自分の天婦羅を俺の丼に入れてよこす。

「どうしたの?」

「あんまり脂っこい物は、まだ食べれそうに無いんじゃあや」

「じゃあどうして天婦羅うどんにしたの? 山菜とかあったのに」

「うん、何となく」

「…」

まあ、父らしさを取り戻しつつある訳だ。 こんなことで、らしさを感じるのもどうかと思うが。