2007 02 16

学校の事情

いじめ解決の成功集、文科省が37例を全国配布へ と題した、読売新聞の記事。

文部科学省は15日、いじめ問題に対する学校現場の取り組みを、初めて事例集にまとめた。

いじめた生徒を出席停止にし、指導した結果、生活態度が改善したケースなどが紹介されている。 同省はこの事例集を来月中に全国すべての小中高校に配布する予定で、 「成果のあった取り組みばかりなので、ぜひ参考にしてほしい」 と話している。

同省は昨年12月、全国の教育委員会や学校から、学校ぐるみでいじめを解決した事例などを募集。 寄せられた約180件の中から37のケースを選んだ。

小学6年の男子が8か月にわたり、同級生3人に 「授業中にノートをとるな」 などと理不尽なことを命令していた事例では、担任がクラス内の学級委員8人に協力を求めて解決した。 いじめられていた3人は、学級委員が 「絶対に守る」 と約束したことを心強く思い、いじめた男子に 「命令されるのは嫌だ」 とはっきり言えるようになった。

同級生1人を暴行するなどした中学生7人を4日間出席停止にし、その後3か月、別室で個別指導した例も載せられている。 個別指導の期間中、教職員が総出で老人ホームや農園での体験活動をサポート。 加害生徒はクラスに復帰後、態度が良くなったという。

当初は 「いじめられる子供にも問題がある」 と思っていた小学校教諭が、当事者の気持ちを知り、 「いじめは許されない」 と気づいた事例も紹介されている。

忘れ物の多い女児が、同級生から非難されたり、悪口を言われたりしているのを見ても、担任の教諭は 「悪口や非難は『忘れ物をしない』というクラスの目標を全員で守ろうとする姿勢の表れ」 と容認していた。 しかし、女児が 「自分も頑張っているのに。 クラスにいるのがつらい」 と養護教諭に打ち明けていた事実を知って反省。 「やろうと思っても出来なかった経験がだれにでもあるはず」 とほかの児童に訴え、女児の心情を理解させたという。

まあ、思うところはいろいろある。

このところ、 「いじめる生徒を積極的に出席停止にする方針」 とか、 「どこからが体罰で、どこまでなら体罰じゃないのか、のガイドラインを示す」 とかやっていた訳で、寄せられた中から選ばれた37事例ってのは、こうした文科省の方針に沿うものなんだろう。

気になるのは、選ばれなかった事例。 全部でおよそ180事例だというから、選ばれなかった方が多いんだよね。 これらは、いったいどんな解決だったんだろうか。 選ばれた37例と被るものだったのか。 個別の状況に依存した汎用性の無いものだったのか。 それとも、とても公表できないようなものだったのか。 苛めた生徒を、教師が寄って集って苛めて、苛められる側の気持ちを教えたとか。

と言うか、高々180しかないのだから、そこから更に選ばなくてもいいんじゃないのかね。 せっかく集まったものを、捨ててしまうのももったいないだろう。 苛めの現場それぞれに状況は違うのだから、参考にする事例だって多い方がいいと思うのだが。 それをわざわざ選んで見せるのは、苛めの解決よりも自分たちの方針の正しさをアピールすることを優先してるんじゃないかって、勘繰ってしまう。 ま、文科省の本意がどうであれ、わずか37でも、無いよりは有った方がいいのだが。

いや、その前に、だ。 全国から募集してるのに、集まった解決事例が約180ってどうよ。 いくらなんでも少なくないか? そもそもそんなに苛めが無いのか、それなりに有って解決しないのか、苛めが有る(有った)といいたくないのか。 それに、その集まった事例だって、全部が全部、苛めが解決したんじゃないような気がするのだが。 苛めが教師の目の届かないところに潜ったのを、解決したと思っているとか。 記事にあった最後の事例が、何かちょっとそんな雰囲気なんだけど。

記事の事例で言うなら最初のケースも、ちょっと違った意味で気になるな。 苛められっ子を 「絶対に守る」 と約束する学級委員。 苛めっ子が暴力を振るった場合は、暴力を持って守ることを善しとするのだろうか。 愛国無罪みたいな。 それとも、 「そんな場合はすぐに先生を呼びなさい。 学校の外であれば警察を呼びなさい」 なんだろうか。