2008 05 01

かくれんぼ

小学校の柵沿いの歩道を歩いていた。 ちょうど放課後の時間らしく、校庭には子供たちが溢れて大変な騒ぎ。

校庭の端にある倉庫のような建物の裏に、女の子が一人駆け込んできた。 裏の壁に張り付き、そーっと顔だけ出して校庭の様子を伺っているのは、どうやらかくれんぼの最中らしい。

しばらく校庭の様子を伺って安心したのだろう。 くるりと反転して、壁にもたれて、ふうっと大きく息を吐いた。 で、顔を上げてこっちを見たと思ったら、 「あっ! 先生っ! せーんーせー!」 と、ぴょんぴょん跳びながら手を振り始めた。

一瞬、 「え? 俺?」 なんて驚きつつ、視線を追って振り返ると、幼稚園のバスが通り過ぎるところだった。 バスの中で、先生らしい女の人が両手を大きく振っている。 満面の笑顔で。 再び振り返ると、女の子も満面の笑顔。 幼稚園のバスが見えなくなるまで、もう全力で手を振っていた。

バスが見えなくなり、何となく足を止めていた俺も歩き出した。 背中から、女の子の声が聞こえてくる。

「ねえ、今の、先生?」

「うん。 幼稚園のときの」

「ふーん。 なんか優しそう」

「うん。 優しいよ」

「ふーん。 あ、そうだ。 みーつけた!」

「え? あ…あはは…見つかっちゃった」

「大声出してるからすぐわかったよ」

「あはは」

まあ、楽しそうでいいことだ。 そう言えば、かくれんぼを最後にやったのって、いつだったろう。 もう思い出せないな。