2009 11 04

いつもの通りの満員電車。 今日は幸い早くから座れて、ちょっとうとうとしていた。 治安の悪い国の人には、きっと信じられないだろう無防備さで。

何度目かに目を覚ましたときのこと。 何となく見た床に、水滴(?)が落ちたらしい跡が有った。 小さな小さな水たまり。 雨? …じゃないよな、誰も傘を持ってないし。 なんて思っているうちに、またポタリと一滴。

水源が気になって顔を上げると、目の前には新聞を広げたサラリーマン風が立っていて、その向こうがどうなっているのか判らない。 水滴は、このサラリーマン風と、その後ろに立つジーンズに女物の靴の間に落ちている。

空調の結露だろうか。 新聞越しに空調は見えるが、そこから水滴が垂れてくる様子は無い。 それに、空調からの水滴だったらもっと立っている人が反応しそうなものだが。

そんなことを考えながら、定期的に落ちてくる滴を眺めていたら、電車が笹塚について、人がごっそりと降りていった。 俺の前に立っていたサラリーマン風も。 その後ろにいた、ジーンズに女物の靴の人はそのまま。

で、再度見上げると、ジーンズに女物の靴の人の髪が、ぐっしょり濡れていたのだった。 小太りの女のポニーテールが。 いや、ポニーテールというには、位置が下過ぎるか。 単に束ねただけの髪。 頭全体が濡れている訳ではなくて、その束ねた部分から先だけが濡れて、そこから定期的に、ぽたりぽたりと滴が落ちているのだった。

朝、洗った髪を乾かす暇がなくて、濡れたままで電車に乗ったんだろうか。 濡れた髪のままで満員電車に乗るのは、周囲には全くもって迷惑な話だが、可能性としてはこれが一番高い。 高いのだが。

彼女の束ねた髪の中にもう一つの顔が有る。 そっちの顔は人を食っている。 髪から垂れる滴は、その顔が 「美味そうな人がたくさんいる!」 なんて垂らしている涎。

その時、その濡れた髪を見ながら、そんなことを想像してしまったのだった。 で、 「ああ、だから小太りなのか」 なんて失礼極まりない納得までしてしまったのだった。

ごめんなさい。 どこの誰かは知らないけれど。