2010 07 02

ラスボス

出張先に持っていっている会社のPCのセキュリティ設定を変えなきゃならなくなって、会社に戻ってその作業。 このPCが、CPUが Pentium M という骨董品で、何をやるにも遅い。 セキュリティ設定変更も、ボタンを押しては数時間待つことの繰り返し。 テンション下がる。 まあ、たいてい低いけど。

「どうですか?」

「もうすぐ終わりそう。 インストール後のクリーンアップだってさ」

「ああ、それがラスボスですよ」

「そうなの?」

「ええ」

「あー…まだ待つのか…。 ラスボスって、たいていは強くて攻略に困るんだよね?」

「そうですね」

「もっと違う方向はどうだろう。 例えば、物凄く可愛くて、攻撃すると心が痛むから攻撃出来ないとか」

「それは確かに新しいですけど、ゲームになるんですか?」

「するんだよ、前向きに」

「はあ」

「レッサーパンダとか、どう?」

「レッサーパンダですか」

「あ、自分で例に出して言うのもなんだけど、あんまり可愛くないか」

「え? 可愛いじゃないですか、レッサーパンダ」

「騙されてるんだよ、それ、模様に」

「いや、本当に可愛いですよ、ほら、これ」

「そんなことで画像検索しなくていいよ。 でもほら、パンダと同じで目付き悪いじゃん」

「そんなことないですよ」

「あと、小さいとたいてい可愛く見えるからね。 ゴジラだって5cmぐらいなら可愛いよ、きっと」

「こんなぐらいのゴジラですか?」

「そう。 鳴き声もちょっと甲高い感じで」

「あー、可愛いですかね」

「まあ、放射能を吐く嫌な奴なんだけどね」

「そう言えば放射能でしたね、あれって」

「放射線じゃなくて放射能ってのがポイントね。 浴びた相手が放射線を出す能力を得るという」

「むしろ相手の方が強くなりそうじゃないですか?」

「放射線を出す方向を選べないんだよ。 体内にも放射してるんだね」

「ああ、なるほど」

「長期的な視点で攻撃してるんだよ。 癌になって、ずっと苦しんで死ぬんだね、やられた方は」

「うわ、そう考えると本当に嫌な攻撃ですね、放射能って」

「だろ?」

そんな暇潰しの会話も、長い待ち時間には一瞬のこと。 彼の言葉通り、クリーンアップはこの後4時間待っても終わらず、結局PCを放置して帰り、翌朝(と言うのは今日のことだが)7時に会社に行って続きをやることになったのだった。