2011 01 26

不幸の条件

もう上映しているのか、これからなのか、 「幸福の条件」 という映画について。

ストーリーは、お金に苦しむ夫婦の間に大富豪がある話を持ちかけることで始まる。 その話とは、一晩彼女を貸してくれれば100万ドル払うというものだ。 悩んだ末に夫婦はこの夜のことはお互いに忘れると決めて、この申し出を受け入れる。 しかし彼女が彼の元に帰ってきた後も、彼女と大富豪が密会しているのではと彼は疑い始め、2人の愛に亀裂が生じていく……。

思わぬ出来事から愛の試練にさらされることになった一組の夫婦。 一体2人の心の中では何が起きたのか。 心理学者であり、『恋のからくり心理学』の著者でもある渋谷昌三先生に伺った。

〜(中略)〜

また、一度不信感を抱くと、どこまでも疑ってしまうのも男性の特徴だと渋谷先生は言う。 女性はたとえ不信感を抱いたとしても、それが払拭された場合はそこから前向きに関係を続けていくことができるが、男性はどこかで疑惑を抱き続けてしまうと言うのだ。

これは、女性は男性の 「二度としない」 という言葉を信じて浮気を許してしまう場合が多いが、男性はどこかで女性の言葉を信じることができず絶対に許せなく別れてしまうケースが多いことにも通じるとのこと。

男女の関係性に対する考え方の違いが招いた悲劇とも言えるこの映画だが、最後は彼女が彼のもとに走り寄る場面で終わる。 その後、彼女は全力で修復を試みたことだろうが、彼は一度抱いた不信感を深い愛情で乗り越えることができたのだろうか。 二人の間に生じた亀裂を埋めようとするとき、男性女性それぞれの乗り越えるべき壁は全く違うもののようだ。

心理学としてどうだという話があっても、そうした心の働きがどこから来るのかについては全く語られていないんだよな。 それでいいのか、渋谷先生。 って、誰?

という訳で、何故そうなのかを、俺がさらっと教えてやろう。 キーワードは子供。 子供が誰の子なのか、女は判るが、男は判らない。 だから、女は男の浮気を許せるが、男は女の浮気を許せないのだな。

許せるってのは違うか。 その他諸々打算的検討の結果、忘れた振りをすることが出来るかどうかだ。 女性はたとえ不信感を抱いたとしても、それが払拭された場合はそこから前向きに関係を続けていくことができる ってのは嘘。 まず、不信感は払拭されない。 むしろ何も無いのに疑うのがデフォルト。 で、前向きになったように見えても、事ある毎に 「あのときは…」 と持ち出すのだ。

更に、この映画の場合は、男女が対等じゃないんだよな。 女の方が圧倒的に高評価されてる訳で、その後互いに無かったことにしようとしても、無かったことにするためのエネルギーは全然違うのだ。

有り得ない話ではあるが、自分ならどうするかと考えるに、一周間ぐらいレンタルして報酬を山分けして離婚かな。 最初から一週間とか奥さんと話したら速攻離婚だろうから、奥さんの前では断腸の思いを演出。 交渉は富豪と直接、奥さんの知らぬ所で。

富豪から 「是非もう一晩」 なんて申し出をしてもらう。 翌日、帰ろうとする奥さんに。

奥さん的には、既に最初の一歩を踏み出しているのだから、次の一歩の敷居がかなり低くなっているはず。 そこに更に、 「あと五日付き合ってくれれば、それで得る金は、君の夫が事業を始めるに十分な資金となるだろう。 私はそれだけの金を提供してもいいと思っている。 君にはそれだけの価値がある」 とかなんとか、奥さんの自尊心をくすぐる言い訳も用意する。

奥さんが渋るようなら、逆にちょっぴり脅してもらう。 「君たちを再び貧乏に追い込むことなんて、とても簡単なことなんだよ?」 なんて。

そんなこんなで一週間延滞の末に帰ってきた奥さんに、また断腸の思いの演出をしながら、 「やっぱり無理だ。 好きだからこそ、無理だ。 別れよう」 なんて離婚を持ち出す。 まあ、そこで 「じゃあ一週間で」 とか言い出すような相手だと、富豪の方の気持ちが萎えちゃうんだろうけど。

見てもいない映画の登場人物の心を想像するのもどうかと思うが、そこを敢えて。 この富豪がこんな申し出をしたのって、奥さんが好みだったってのもあるかもしれないけど、それ以上に、幸せになろうともがいている家庭を不幸にしてみたいって気持ちなんじゃないだろうか。 子供の頃に蟻の行列を踏みにじった時に感じた高揚感の大人版とでもいうような。 だから、悩んで悩んで悩んだ末に不幸に足を踏み出すような、そんな提案を持ちかけるのだ。 だから、そうした誘いに大して悩みもせずにホイホイ乗ってこられると、きっと萎えてしまうんじゃないかと思う。

いや、逆方向も有りか。 富豪が、実は若くて貧乏だった頃に、彼女を金持ちにとられた(富豪目線で)とか。 その時のコンプレックス(?)から、かつての自分と同じような境遇の男女を見かける度に、金で不幸に突き落とそうとする。 「どうせ金に目が眩むんだろ」 と思いながら。 でも、自分でも意識しない心の奥底では、そんな金に転ばないで欲しいとも思っていて、だから企みが成功する度に、逆に何だか判らないけど満たされない思いが湧いて出てきてしまう悪循環。 ああ、これはちょっと安っぽいか。

けどまあ、なるならやっぱり富豪だよな。 宝籤でも買ってくるかな。