経営再建中のJALの子会社JEXが、パイロット訓練生の内定を取り消したんだそうだ。
内定を取り消されたのは、社会人5人、院生含む学21人の、計26人。 JALグループ合同の入社式にも参加したのに、その後に内定取り消し。 会社側は、最大100万円の一時金を支払うとか。
まあ、厳しいけど仕方ないよな。 JALの場合は、地方空港建設の犠牲になったという一面もあるし、少なくとも内定を取り消された人には、国交省から何らかの見舞金があってもいいような気もする。 省は違うが、銀行にはあれだけ税金をつぎ込んだんだから。 有り得ない収益予測を立てた天下りコンサルタント会社から、役員の退職金を返納させるとかも可。
でも、なぁ。 内定すら取れない人がたくさんいる中で、このケースだけ特別扱いをするのもどうかとも思う。 そりゃ落胆はしたろうが、一つも内定が取れずに終わった人と比べれば、100万はやっぱりプラスなんだよな。
それに、内定を切られた側の自己責任だと全て切り捨てるのは酷だが、何の責任も無い訳じゃないからね。 会社が傾いていたのは、誰かにわざわざ指摘されなくても、自分でもある程度は判っていたことだろう。 そこで離れるか留まるか、それは結局は自分の責任で選んだことなのだから。 選ぶための情報は十分には与えられてなかっただろうが、この先、何を仕事にするとしても、判断のための情報が十分に与えられるようなことの方が少ないだろう。 不況なら尚更。
これ、元ネタは時事通信だが、記事には
大空への思いを裏切られた若者
と見出しがつけられていた。
内定を取り消された側からすれば 「大空への思い」 に対する裏切りかもしれないが、今の航路をできるだけ維持存続させるというのもまた 「大空への思い」 であって、内定取り消しはこっちの思いを裏切らないための決断なのだ。
ってのは、やっぱり無理があるか。 でも、いかにも同情集めな感じのタイトルをつけられると、無理矢理にでも反対したくなるんだよな。
そうそう、記事の論調に反対したくなると言えば、こんなのも。 YOMIURI ONLINE から。
昨年4月、北海道北見市で長男が両親を殺傷したとされる事件で、殺人などの罪に問われた無職渡辺大起被告（24）の裁判員裁判の第3回公判が2日、釧路地裁（金子大作裁判長）で開かれた。 この日の証人尋問では、重傷を負った父（58）が出廷し、 「許されるなら、早く社会復帰させたい」 と証言した。
この事件では、母（当時55歳）が包丁で刺されて殺害され、父も数回刺され、一時は生命が危ぶまれた。
冒頭陳述などでは、渡辺被告は大学を中退し、公務員試験にも落ち、家に戻ったが、母親に 「クズ」 などと叱責されたことに腹を立てたとしている。 法廷で父親は 「やったことをみつめ、母親を供養しながら強く生きていってほしい。 分かるな、大起」 と渡辺被告に呼び掛けた。
父親は 「刑務所に入るのは間違いないと思うが、強く生きていくため、これからも面会で話し合いたい」 と述べた。
渡辺被告は涙を流し聞き入っていた。
記事は、更生に繋がるシーンとして書いているのだろう。 でも、この記事からだと、登場する誰に対しても、いいイメージが全く湧かないんだよな。
特に母親。 試験に落ちて帰ってきた息子が一番辛いだろうに、そんな子を持った自分の方が辛いとか恥ずかしいとか、いつだって自分が一番可哀想だと思うようなタイプだから 「クズ」 なんて言葉が出てくるのだ。 今に始まったことじゃない。 息子がもっと小さい頃から、ずっとこの調子だったのだ。
息子は息子で、それでも母親だからこんな状況で家に帰れば慰めの言葉の一つもかけてもらえると、心のどこかで期待していただろう。 しかし現実は 「クズ」 呼ばわり。 そこで萎えるんじゃなくてキレる所が、この母親の遺伝子なんだろう。
父親は、この母親にうんざりしていたのだ。 家でグウタラしているくせに、口を開けば 「稼ぎが少ない」 「粗大ゴミ」 「私は24時間365日家事に追われて大変なのに、あんたは仕事だけでズルい」 「息子がこんな様なのはあんたに似たから」 等々。 離婚するか？ でも色々面倒だし、財産をごっそり持っていかれるのは腹が立つし、いっそのこと…なんて考える日々だったのだ。
だから、事件は渡りに船だったのかもしれない。 息子が母親だけを刺したのなら、世間の目は自分に冷たいかもしれないが、幸か不幸か自分も刺されている。 ここらでかっこいいことでも言っておけば、なんかちょっと器の大きい大人って扱いになるんじゃないか。 なんだかんだで厄介払いという結果だから、かっこよさそうなことを言うにも心が痛まない。
母を供養して、強く生きろ
ただし刑務所で。
なんて、風邪が治り切らなくてゴホゴホいってるのに、想像力だけは無駄に元気だな。