2011 08 29

Don't get that

何だか微妙に忙しい毎日。 一つ一つはちょっとしたことなのだが、それらが次々とやってきて、なかなか落ち着かないのだ。

「その報告書って、ひょっとしてまた『ごめんなさい』なの?」

「そうです。 私の謝りっぷりを見せてやりますよ」

「あー、何だっけ? スーパー土下座タイム?」

「そう、それです」

「もうずっと土下座タイムなんだから、この際もう一ランク上を見せるのはどう? 土下寝とかさ」

「ずっとって言わないでください。 ドゲネって何ですか?」

「見た目はうつ伏せだね」

「…それ、謝ってる気持ちが通じますかね?」

「それは通じるだろ。 何で土下座で謝る気持ちが通じるのか考えてみなよ」

「何でって… 本来つけないはずの額を地面につけるからですか?」

「だったら、接地面積が大きい程良いって判断になるだろ」

「えー、でも今は、説明されて、考えて、それでも納得できるようなできないような感じなんですけど」

「それはきっと言葉の響きだね。 五体投地と言えば納得できるんじゃない?」

「ああ、なるほど… って、しまった、一瞬納得しそうでしたよ」

「遠慮せずすればいいのに。 そうそう、ポーズで思い出した。 さっき、昼休みにふと湧いてきた疑問なんだけどさ」

「なんですか?」

「こう、指をちょっとそらし気味に揃えて掌を前に向けて口を覆って『あの人ってコレ?』って訊かれたら、意味通じるよね?」

「通じますね」

「あれの男女逆版って、どんな仕草になるんだろうって。 無いよね?」

「あー… そうですね、無いですね」

「それで、じゃあどんなのが良いか考えてたんだけど、なかなかしっくり来るのが無いんだよ」

「そんなことを考えてたんですか」

「うん。 こっちの仕草は、歌舞伎の女形から来てるんじゃないかと思うんだよ。 だから、ヒントは宝塚にあるんじゃないかと」

「なるほど。 いつも思うんですけど、微妙に本当っぽいところを突いてきますよね」

「なんだよ、本当っぽいって。 宝塚、見たことある?」

「無いです」

「俺も無い。 実は見たくもない。 CMでチラッと見ただけでうんざりだった」

「駄目じゃないですか」

「うん。 はぁ… こうして余計なことばかり考えるのも、もうさ、毎日言ってるけど、この作業がつまんないからだよね」

「ほんと、そうですよね。 どうでもいいことで忙しいのがまた」

「何かこう、非日常的なことが起きれば良いのにね、地震以外で」

「地震は駄目ですか」

「うん、駄目。 ディスプレイから貞子が出てくる方が良い」

「いや、そっちの方が駄目でしょ」

「いやいや、意外に知らない人が多いけど、貞子って仲間由紀恵だからね。 かなり美人だよ?」

「いくら美人でも、あれはちょっと。 死ぬんですよ?」

「あれは、どういう理屈で死ぬんだろうね」

「うーん、ショックじゃないですか?」

「じゃあ、来るって判ってれば問題無いじゃん。 結局のところ、登場の仕方と目付きが悪いだけだからね。 展開が判ってるなら、割と余裕だろ」

「確かに」

「それに、あんな美人が、濡れて張り付いて透ける白い服で来るんだからね。 むしろご褒美だろ」

「あの登場シーンを見てそんなこと考えてたんですか」

「うん。 出てこようとしたところで、頭抑えたりしてさ。 『な! ちょっと、止めてくださいよ!』 なんて言わせたりとか」

「あー、またそんな方向に」

「上半身が出たところで 『胸が無いと出るの楽だよね』 とか」

「むしろ貞子にセクハラを妄想している方が怖いような」

「でもちょっと楽しそうだろ?」

「否定できない自分が嫌です」

「真っ赤になった貞子が引っ込んだと思ったら、画面が 『殺してやる殺してやる…』 って埋まってくんだよ」

「それはそれで、結構怖くないですか?」

「いやそれが 『殺してやる殺してやるこど』 って、途中で咬んでそれっきり」

「あははは、それはちょっと可愛いかも」

ところで、テレビから這い出してくるのは女だが、長い髪の間からギロッと睨むのは男がやってるんだそうだ。 監督が女優に、睫毛を抜いて撮影したいと頼んだのだが、女優は拒否。 それで、その場にいた助監督が代役として、睫毛を抜いて撮影に当ったとのこと。 家に帰ってから、ふと気になって調べて判った。 あの程度の短いシーンなら、わざわざ睫毛を抜かなくても、CGでどうにでもなるようなものだと思うが、それじゃ駄目なんだろうか。