2012 02 16

迷い道

新刊JPが何なのか全く知らないのだが、そこの編集部と署名(?)された記事から。

欧米でも男女の賃金格差は存在しますが、それでも男性に比べて80%前後の水準です。 管理職に占める女性の割合も欧米で30%前後、フィリピンなどは50%を超えています。 諸外国と比較しても、日本は明らかに男女の処遇差が大きい国といえます。 それに対して、女性より男性の方が優秀という明確な根拠は見当たりません。 女性上位の会社ほど儲かる、という調査データもあるくらいです。

実は、日本企業の人事や賃金は、男が定年まで勤めることを前提につくられてきた仕組みです。 一方で、女性の側も結婚退職して専業主婦が当然だった頃は、OL時代の給料よりも結婚後のダンナさんの給料が高いことの方が、長い目で見れば得でした。 そのため、男女の賃金格差に目くじらを立てることもなかったのです。

ところが、これだけ男女とも未婚率が増えた昨今、その前提条件は崩れてしまいました。 男性では、20代後半で約70%、30代前半でも50%近くの人が未婚者です。 女性でも、20代後半で約60%、30代前半でも約30%の人が結婚していません。 こうして見てみると、「男は外で働いて、女は専業主婦になって子供を育てる」という旧来の生活モデル自体が完全に崩壊していることがわかります。 また一方で、男は新卒で入社して1つの会社に定年まで勤め上げることを理想とする勤務モデルも、とうの昔に崩壊しています。

これは、人事コンサルタントの山口という人が語る、処遇の男女差の理由。 山口さんが実際にこう語ったのか、編集部の編集の結果なのかは知らないが、いずれにしても編集部としてはこう主張したいってことなんだろう。

これでは男女差の説明になっていないのでは? という根本的な疑問もあるのだが、それは置いておくとして、とりあえず二つ。

まずは 女性より男性の方が優秀という明確な根拠は見当たりません について。 何をして優秀というかは評価軸が色々あって一概に言えないが、分かりやすい指標を挙げるなら、IQは有意に男の方が高い。 ただしばらつきも男の方が広いのだが。

次に 女性上位の会社ほど儲かる、という調査データもあるくらいです について。 これは因果が逆だと思う。 福利厚生を充実できるのは儲かっている会社で、だからこそ女性が進出できたと考えた方が自然だろう。

こうした記事って、たいていは 「誰だって、やればできるし、やる気もある」 というのを基本に論を展開しているのだが、そもそもそこが間違ってるんだよな。

やればできると思っている人はたくさんいるのだが、実際にできる人はほんの一握りだし、やる気のある人は更に一握り。 やればできると思っているほとんどの人は、やってもできない。 それ以前に 「やる」 という能力すらも無い。 まずやってみるという最初の一歩を踏み出すことすらできないのだ。 で、薄々そのことに気付いてはいるのだが、そんな現実は認めたくないので、やらないことの言い訳を探す。 男社会とかね。 できないのではないが、男社会ではどう頑張ったって無駄。 だからやらない。 なんて、環境を言い訳にして、自分の無能さから眼をそらすのだ。

って、まあ、リップサービスにケチを付けるのもどうかって話ではあるな。

勤務モデルの崩壊が関係しているかもしれない記事をもう一つ。 時事通信から。

2011年に全国の警察が摘発した児童虐待事件は、前年比32件増の384件、被害児童は38人増の398人で、いずれも統計を取り始めた1999年以降、過去最多だったことが16日、警察庁のまとめで分かった。

児童虐待の摘発件数は6年連続で増加し、02年以降の10年間で倍増。 近隣住民が虐待の恐れがあるとして通報するケースなどが増え、早期の発見、摘発がしやすくなったことが理由とみられる。

児童虐待の加害者となった保護者は409人で過去最多。 実父(134人)と実母(119人)で61.9%を占め、ほかに養父82人、母親の内縁の夫が60人などだった。

39人も子供が死んでいるのだから、もう実父と実母は禁止した方がいいのでは? と、蒟蒻ゼリーやナイフの会社は嫌味を言いたくなるのかな。

さて、一昨年ぐらいまで、近所からよく子供の泣き声が聞こえてた。 かなり激しい泣き方で、ちょっと虐待を疑った。

でも、たまに親子連れで出かけている姿は、けっこう仲良さそうだった。 子供も特に怯えた風もない。

虐待されている子は、虐待されているからこそ必死に親の機嫌をとるので、傍目には問題がないように見える。 と、どこかで聞いた気もするし、泣いてるときは尋常じゃないし、やっぱり虐待だろうか。 通報した方が良いんだろうか。 でも、考えてみれば、小さい子がどんな勢いで泣くのかなんて知らないし、あれが普通なのかもしれない。

通報して、結果として虐待じゃなかったらいいのか。 いや、通報することで危うく保たれていたバランスが崩れて、これをきっかけに虐待が始まるかもしれない。 マンション住まいの核家族。 この年頃の親なら、子育てに追いつめられてギリギリのところで頑張っているのかもしれない。 通報されて役所からの訪問を受けることは、そうした頑張りを否定されるように感じて、それが 「こいつのせいで」 みたいな方向に向かうことはないだろうか。

なんていろいろ迷いながらも何もしないうちに、その一家は引っ越していったのだった。 今になって振り返ると、通報しないための理由探しだったような気もするな。

実際のところ、担当職員って、どんな感じでやってくるんだろうか。 ストレートに 「虐待があると通報を受けて」 みたいなことを言って、何かにとどめを刺しそうなイメージが有るのだが。 事情が判らない最初の訪問のときは、 「ちょうど隣に用事があってきたら、子供の泣き声が聞こえて、なかなか泣き止まないから、ひょっとしたら誰もいない時に怪我でもしたのかと気になって」 とか、責めてるととられないような工夫が必要だと思うんだけど、って、これは工夫になっているのかな。