2014 08 13

写実の粋

夏休みで久しぶりに一人の休日なので、ちょっと足を伸ばして千葉のホキ美術館に行ってきた。

高幡不動 → 新宿 → 東京 → 千葉 → 土気

と、待ち合わせも含めて、およそ2時間半の旅。

ホキ美術館は写実絵画専門の美術館。 今は企画展 人思い、人想う。 の最中で、企画のコーナーでは作家29人の人物画50点が展示されている。

この企画展の展示を一通り見て思うのは、写実ってやっぱり難しいんだろうなっていう当たり前のこと。 入り口で最初に目にする生島浩の 5:55 は、すぐ傍まで近寄って細部を確認したくなる質感なのだが、ここまでのレベルなのはそう多くない。 よく描けてはいるけど写実としては微妙というレベルが多く、普通の絵としか思えない作品も少々。 まあ、写実ってのはつまるところ技法の一つであって、技法の前にまず何か表現したかったものがあるはずだし、画家もリアルさという軸のみで評価されたくはないだろうけどさ。

常設展まで含めて、写実のネタは普通に絵として描かれるものをほぼ網羅しているのだが、ネタによる有利不利も大きい。 陶器や椅子の脚など、硬質の光沢を持つような材質はかなり高いレベルで安定している。 景色は全般に不利。 遠くの森や建物などは、筆の限界よりも現実の方が遥かに細かいからだろうか。 人は微妙。 芸能人の肖像は今一つ。 モデルは女の方が圧倒的に多いのだが、より細かく描写されているのは男の方。 これはモデルに変な遠慮をしなくていいからかもしれないな。

この日、俺が見たかったのは、常設展の森本草介の作品群、特に 横になるポーズ だったのだが。

「あ、これこれ。 これが見たかったんだよ」

「ふーん… 何かバランスおかしくない? 顔より胸の方が大きいよ?」

一緒に見に行ったお嬢さんのコメントがこれ。 それが真っ先に出てくることから、何に触れてはいけないかが何となく判るような、でも判ったことを悟られてもいけないような…

しかし、どうなんだろう。 写実と分類されて展示されているから実際に写実的なんだろうと思うが、実は自分の中にある理想を写実の技法で具現化しただけって可能性も否定できないんだよな。 モデルはいてもポーズの参考程度で。 いや、逆か。 それこそが、写真ではなくて絵画である意味なのかもしれないのか。 現実には得られない理想の容貌とプロポーションを、現実と思わせる肌の質感で再現する。 目指す所はオリエント工業と同じなのかもしれないな。

ホキ美術館の1

ホキは館長の名前。 館長の肖像画も展示されている。 企画展の中にあったのだが、普段はどうなってるんだろう。

ホキ美術館の2

美術館の外見は建設中かと思わせる殺風景だが、中は暖かい感じ。 照明も売りの一つなんだそうだ。 地下4Fまであって結構広いが、基本的に一本道の両サイドに展示されているので、見て歩くのにあまり疲れない。

欠点は交通の便。 土気駅から美術館まではバスなのだが、これが30分に1本ぐらいしかない。 もうちょっと何とかならないものか。