2014 10 19

ニャルカディア

空

夕暮れ。 日が沈むのも随分と早くなった。

猫の寝相の写真を見ているうちに、懐かしいものに辿り着いてしまった。 初めて見たのはもう4年ぐらい前。 そしてその後も何度か目にするのだが、その度に顔がにやけてしまうという、猫に取ってのマタタビのようなコピペ。

出刃包丁持った猫が、俺に包丁突き付けてきた。

猫「おかねちょうだい」
俺「お金? いくら?」
猫「さんぜんえん」
俺「いいよ。 はいどうぞ」
猫「かたいのもほしい」
俺「小銭のこと? 全部持てるかな?」
俺「何買うの?」
猫「カリカリ。 いっぱいかう」
俺「そっか。 でもお店遠いよ? 一緒に行く?」
猫「…いく」
俺「包丁は重いから置いておきなよ。 後で取りにくればいいから」
猫「うん」

……

俺「カリカリいっぱい買えて良かったね」
猫「うん」
俺「重いでしょ? それずっと持って歩くの?」
猫「…重いの」
俺「家に置いとく? 好きな時に取りにくればいいじゃん」
猫「…うん」
俺「外寒いよ? 帰るの?」
猫「…」
俺「泊まる?」
猫「…そうする」

カリカリ、買っちゃうよなぁ。 もちろん、包丁を突きつけられたからしょうがなく、だけど。

そして今日、これに続編があったことを知った。

「…おい。 しっかりしろ」

寒い寒い風の吹く、冬の日だった。
お腹がすいて草むらにへたり込んでいた僕に1匹の猫が声をかけて来た。

「ちいさいな…おまえ、母ちゃんやきょうだいはどうした」
「…わかんない。 いつのまにかひとりになってた」
「そうか…。 どこか行くあてはあるのか」
「……ううん」
「……」
「……」

「…おい、ちび。 包丁はもっているか」

しばらくの沈黙のあと、その猫は僕に言った。

「?」
「もってないのか…なら、これをつかえ」

そう言って彼は、一本の小さい包丁を取り出した。
ちょっと古ぼけてはいたが、それでもきらりと光っていた。

「おれは…もう、つかえないから」

彼は、ちょっと寂しそうにそうつぶやいた。

よく見ると、彼の体はうっすらと透けているように見えた。

「いいか、これからおしえるにんげんのいえへ行け。 そしてこの包丁をだして、今からいうとおりにしゃべるんだ。 しっかりおぼえろよ。…」

僕は彼から教わったとおりに、人間の家へ行ってこう言ったんだ。

「かっ…かねをだちぇ!」

…その後のセリフを上手く言えたかは、あまりにもハラペコ過ぎて正直よく覚えていない。
人間は最初目をまあるくして、そのあと目からぽろぽろ水を出して、僕の頭をわしわしなでてくれたのは覚えている。 きみにはまだカリカリは早いな、かんづめとミルクだね、って言って、いっしょにお店へ行ってくれたんだ。

…僕はそのまま、その家の猫になった。
風のぴゅうぴゅう鳴る音を聞くと、あの時のことが思い出されて、ふっと振り返ると、あの猫―先代猫が、小さな四角い枠の中ですまして座っていた。

あの時もらった包丁は今も、大事に手入れして持っている。

うん、そうだよな。 何度だって、包丁を突きつけられたら金を出しちゃうよな。 ついでにちょっと目から水も出しそうになって、これを人に送りつけるというテロを思いつくのだった。

ハム

食パンならダブルソフトが我が家の定番。 焼いて、マーガリンを塗って、チーズとハムを乗せて食べる。 今日もそう。

ハム

で、ハムの最後の一枚を取ったら、その下にこんなものが。

どこが好きかなんて、答えられません。 貴方をステキだと思う気持ちは理屈ではないのです。

何かのキャンペーンだろうか。 だとすれば、このハムレターにもいくつか種類があるんだろう。 他もみなこんな感じなのかな。

一見ラブレター風のこの言葉も、ハムが大好きな彩り王子が程好く育った豚に贈ったのなら、それはもう死の宣告みたいなもんだよな。