2016 01 05

プラド美術館

連休最終日。 三菱一号美術館に プラド美術館展 - スペイン宮廷 美への情熱 を見に行ってきた。

実はこのプラド美術館展も、最初にパンフレットを見たときの印象は今一つだった。 そこに描かれている王妃の肖像画は、細かい所まで描き込まれているのは良いが、逆に細かい所に捉われて全体のバランスがちょっと疎かになっている感じだったし。

しかし考えてみれば、本当にそんな人だったって可能性もあるんだよな。 画家は全然悪くなくて、いやむしろ良い腕で、あれは現実を忠実に再現した結果。 バランスが疎かになっているのは、絵じゃなくてモデルの方だという可能性。

年末、ラファエル前派展を見に行った帰りの電車の中、そんな反省(?)をしながら展示品を確認して、これはやっぱり行っておくべきだろうと思い直したのだった。 で、思い直して行って正解だった。

展示は、割と小さめの作品が中心。 わざわざ小さいのを選んで持ってきたらしい。 それが本来の企画意図なのか、輸送費や保険といった金絡みなのか、もっと違う大人の事情なのかは分からないが、これはこれで見易くて良いかもしれない。 大きな作品って、見続けるとちょっと疲れるし。

作品の描かれた時代は、15世紀ルネサンスの頃から19世紀までとかなり幅広い。 当然、絵の雰囲気も時代によって大きく違う。 古い時代はほとんど宗教画で、時代が新しくなるにつれて風景画や静物画が増えてくる。 これが俺には微妙なジレンマ。 俺は、技法的にはバロックの頃が、描かれる題材は現代に近い方が好みなのだ。

以下、印象に残っている作品。

スモモとサワーチェリーの載った皿 ファン・バン・デル・アメン

一見なんてことはない静物画なのだが、妙に心惹かれる。 光の加減とか透明感とか。 絵とは関係無い表面のひび割れがまた良い味を出している。

同じ人が描いた吊るされた鶏も良い感じだった。

ロザリオの聖母 バルトロメ・エステバン・ムリーリョ

数少ない大き目の作品の一つ。 見た瞬間にハッとした。

最初は大きさの効果だと思った。 しばらく見ているうちに、子供はなんだか生意気そうだし、母親は別に美人って訳でもないし… と、冷静になって粗探しを始めたし。 しかし2周目に見たときも、やっぱり見た瞬間にちょっとした感動があった。

手に取るように ビセンテ・バルマローリ・ゴンザレス

今日一番の雰囲気美人。

タイトルは単に双眼鏡で見るとすぐ近くに見えるって程度のことなんだろうが、ここに 「あなたの行動は全て」 を補うと、一気に怖ろしくなるな。

ミュージアムショップで絵葉書を売っているのはいつものことだが、今日は二枚組の販売ばかり。 展覧会の謳い文句が、画家の筆使いが見て取れる小作品で、これに合わせて絵の全体と一部を拡大したものとを2枚セットで販売しているのだそうだ。 店員は 「いつもと同じ値段で2枚でお得です」 なんて言っていたのだが。

絵葉書になっている作品の一つに、ドメニコ・ティントレットの 胸をはだける婦人 があった。 エミリヤーエンコ・ヒョードルの妹といった感じの強そうな女の人が胸を晒している姿。 で、これとセットになった拡大画像版で拡大されていたのが、晒した胸だった。 というか乳首だった。

これを一体誰が買うのか?

何故わざわざこんな買いにくいものを作ったのか。 これで売れると思ったのか。 見た瞬間は心底疑問だったのだが、よくよく考えてみれば、買いにくさを感じるのは心が汚れているからなんだよな。 ひょっとすると試されているんだろうか。 いや、もうそんな段階は通り越して、戦いを挑まれているのではないだろうか。

なんてことを考えているうちに、なんだか買わないと負けなような気がしてきて、そんなに好きでもない絵なのに買ってしまった。 もう一セット 手に取るように も併せて買ったのだが、レジで店員に渡すときには拡大乳首を一番上に。

「ありがとうございます。 300円になります」

そして勝利を我が手に。

三菱一号美術館の1

美術館内のエレベーター。

こんなところにまで音声ガイドの広告があり、それが展覧会毎に更新されていることに、ちょっと感心した。

三菱一号美術館の2

美術館の外壁。 展覧会の広告がこれで良いのだろうか。

おっぱい募金

昼もおっぱいだったのに、夜もまたおっぱい。 朝日新聞内のdotから。

募金すると女性の胸を揉めるというイベントがある。 エイズ防止が目的というが、その手法に異論が集まる。

エイズ撲滅活動に賛同して募金すると、女性の胸を揉めるチャリティーイベント「おっぱい募金」。 「チャリティー」に名を借りて、「エロ」を拡散させる行為に、開催中止を求めるネットの署名運動が起こっている。

このイベントは「BSスカパー!」の番組「24時間テレビ エロは地球を救う!」の一環で、2015年12月5、6日に開催された。 今回で13回目になるイベントで、高校生を除く18歳以上の男女が参加できる。 今回の来場者は7175人に上り、募金額は600万円以上となった。

このイベントに不快感を覚えた女性らがネット署名サイト「change.org」で16年以降の中止を求めて署名集めを開始。 15年12月25日時点で8千人以上の賛同者を集めている。 中止要望の趣旨はこうだ。

「『募金』とは名ばかりで、寄付する人はおっぱいを触るための対価としてのお金を払っているだけ」 「あたかも募金という良いことをしたように思わせながら企画への関心を集めるこの仕掛け。 エロをエロとして扱わないことで公共性を高くしているという点でも、余計罪深い」

署名者からも「見ていて不愉快極まりありません」(女性)や「見返りを求めるのは募金ではないと思う」(男性)などとコメントがあり、男女両方から批判の声が出ている。 この署名活動に賛同する太田啓子弁護士は言う。

「『おっぱい募金』の本質は風俗営業だと思っています。 風営法違反にならない理由は、ぴったり当てはまる条文がないからというだけ。 例えるなら合法ドラッグのようなもので、脱法風俗を公に開催していることがまず問題です。 さらに、男性の性的欲望の露出があまりにも公共化されていることに違和感があります。 欲望の露出を自分の家など私的空間にとどめていないことは問題ではないでしょうか」

批判がある一方で、このイベントに賛同する声もある。 「AKBの握手会と何が違うのか」 「エロが目的であっても募金が集まるならいい」などの声がネット上に上がる。 さらに、「change.org」では、おっぱい募金の中止署名に反対するキャンペーンも立ち上がった。

だが、太田弁護士は言う。

「『おっぱい募金を否定するなら、チャリティーコンサートなども全部中止させろ』という意見があることも知っています。 でも歌うことと胸を触らせることは意味が違う。 (募金という)本来の目的と違う風俗にお金を払っているのはおかしいですよね」

何かと 「外国では」 なんて言うメディアが、チャリティーコンサートで出演料が発生していることについては沈黙してるんだよな。 「海外では出演料なんてないし、出演料を得るならチャリティーではない」 という意見はたくさん有るにもかかわらず。 まずはそこから突っ込めよと思うが、まあそれはそれとして。

記事中の賛成/反対のどちらの主張にも、寄付を貰う側の視点がまるでないのはどうよ。 寄付を受ける側の意向を無視して、寄付に対する自分たちのポリシーを優先するってのが、そもそも間違っているだろう。

いや、無視してるつもりはないのかもしれないな。 自分の都合の良いように想像して、しかしそれが都合のいい想像だとは気づいていないのかも。

まあどっちにしても、まずやるべきは寄付金の行き先となるはずの可哀想な人たちに、

「おっぱい揉むのを餌に募金を集めようと思うんだけど、どう?」

と訊いてみることだろう。 それでも欲しいって言うならやればいい。 まずはそこの確認から始めろよ。

おっぱい募金の行き先が裸族の村だったりすると、確認もなかなか面白いことになりそうだよな。

「おっぱいを揉む対価として一人1000円を寄付するというイベントを企画してまして」

「は?」

みたいな。 訊かれる側は、何に価値があるのかも何が問題なのかも判らず、ただ困惑するばかり。

1000円が数ヶ月の生活費だったりすると 「寄付を受ける私たちが直接揉ませるから、AV女優の出演料として使う金を私たちの渡航費として出せ」 なんてことになりそう。

でも実際にそうなると、太田弁護士はきっと騙して連れてきたなんていうんだろうな。 で、賠償金なんて知恵をつけて、今度は桁違いの金を嘘泣きしながら要求してくるのだ。

デジャヴュ。 略してデヴュ。