2018 08 27

お父さんみたいにならないで

さくらももこが死んだ。 亡くなったのは15日で、その発表が今日。 いや、昨日だったかも。 享年53歳。 乳癌だったそうだ。

俺にとって、さくらももこは ちびまる子ちゃんコジコジ の人。

学生時代、同じアパートに住んでいた友人から面白いアニメがあると薦められて見たのが、ちびまる子ちゃん。 「本編も面白いけど、歌が凄いんだよ。 歌詞はふざけてるのに、演奏は上手いし、ボーカルもすげーかっこいいし」 と、多分バンドをやっていたからだと思うが、やけにエンディングを推していた。

そのエンディングの おどるポンポコリン は確かに無駄に凄かったが、初めて見た日のアニメ本編も面白かった。 話の内容はもうほとんど忘れてしまったが、テレビの前でずっとニヤニヤしていたのは覚えている。

ちびまる子ちゃんは自伝的漫画という扱いだが、そこに描かれている家族は、実際とは全然違ったのだそうだ。 特に友蔵爺さん。 ちょっと気弱で孫に甘い祖父として描かれているが、現実の友蔵は、葬式の時にやっと死んでくれたと喜ばれるような嫌な人だったとか。

あの漫画は、こうあってほしいと彼女が願う世界だったのだろうか。 それにしては、ちょいちょい黒い部分が滲み出していたように思うが。

まあ、ただほのぼのしているだけじゃ売れないだろうし、そんな子供時代だったら、あんな漫画を描こうなんて思いもしなかったかもしれない。

そうそう、黒い子供時代で思い出したのが、相談者が女子高生で回答者が岡田斗司夫の相談物。 岡田斗司夫の回答がキレッキレで面白かったんだよな。 せっかく思い出したので、探して見たらあっさり見つかったのだが、また探さなくてもいいように全文載せておく。

相談者 女子高生 10代

10代の女子高生です。

父の休日は食べる、寝る、テレビの繰り返し。 他のことは何ひとつやりません。 仕事は自営業で、「忙しい」と言う時期もありますが、一日中テレビがついているようで、ちゃんと仕事しているのか不審です。 最近は夜遅くまでケータイをいじっており、50歳にしてケータイ依存症で、意味がわかりません。

私は物心ついたときから父が嫌いで、母には「お父さんみたいにならないように」と、育てられてきました。 幼い頃、2月の公園の噴水で私が遊びたがるからと父が遊ばせ、私は肺炎で入院したことがあります。

父への感謝の気持ちはこれっぽっちもありません。 老後の面倒を見る気はなく、のたれ死ねばいいと思います。 お父さんと仲がいい友達がとてもうらやましいです。 父を好きに……なろうとしても、いいところなんてひとつもないし、子供に無関心ですべて母に任せきり。 最近は通知表も父には見せていません。

母は父との結婚は失敗と言っており、私は離婚してほしいのですが、経済的なことを考えると無理です。 父がいる休日はイライラし、死んでほしい、殺したいという気持ちが強くなります。 虐待でもされれば訴えられるのにと、楽しいはずの休日はストレスでつらくて泣くようになりました。 どうすれば良いのでしょうか。 思春期という理由で片付けないでほしいです。

回答者 評論家 岡田斗司夫

「お父さんみたいにならないで」。 母はいつも言う。

不思議です。 あなたは女、父にはなれません。 なるとすれば母親でしょう。

「お母さんみたいになっちゃダメよ。」こう言うべきです。

なぜ母は「私のような母親になるな」と言えないのか? ここがポイントです。 「私のような母親」とはどんな母親でしょう。 答えは簡単ですね。

自分に無関心・無頓着な夫と結婚し、離婚もできず、思いつく限りの愚痴を幼い頃から言い聞かせ、やがて娘が「父など死ねばいい」と思いこみ休日に泣いて過ごすように仕向ける母。 それが「私のような母」です。

本当に最悪の父なら、なぜ母親は離婚しないのか? これも簡単、ちゃんとストレスのはけ口があるからです。 自分の言い分を全部信じる娘に毎日悪口を言ってストレス発散してる。 だから母は耐えられる。 つまりあなたの犠牲の上に、母は暮らしている。

あなたの父親像は、母の愚痴でできている。 寒い中、娘にせがまれて公園まで連れて行く父。 はしゃいで寒いのも忘れ夢中であなたは噴水で遊んだ。 でも風邪を引いたあなたに母は「父が悪い」と吹き込みます。 繰り返される呪いの言葉が楽しい思い出を消してしまったのです。

人間は弱い。 誰かの愚痴や文句を言わないと生きていけない。

母の不幸は、家に閉じこめられて、視野が狭いことです。 趣味が「父のダメ出し→娘に吐き出し」だけ。 こんなの誰の得にもなりません。

ではどうするか? あなたがこのマイナス連鎖を切りましょう。 誘ってあげて、お母さんの興味を外に向けさせる。 これができれば、状況はかなり改善されるはずです。 お母さんと一緒に映画やショッピングや旅行をする。 そのために、あなたがバイトをするのもアリ。 お母さんにもパートを出ることをどんどん勧めましょう。

パートをすれば、お母さんの世界も広がるし、お金も、できることも増えます。 本当に最悪な父なら、あなたと母が一緒に働いたら独立も可能でしょう。

難しすぎますか? じゃああなただけでも逃げてください。 たった3人家族で2人が1人の悪口を言い合っている家は地獄ですよ。 高校生ならもう働けます。

逃げなさい。 さもなければ、母を助けなさい。

まあ、あれだ。 細かいツッコミだけど、女子高生はたいてい10代だよな。

こうした相談に対する回答って、何か希望を見せる必要があるんだろう。 ここでは、母の問題を環境による視野の狭さが原因とし、環境を変えれば母も変わるというのが、回答者が見せる希望なんだろうと思う。

でも、この母親、きっと変わらない。 パートに出て変わるのは悪口の対象だけ。 これまでは父親の悪口だったのが、パートに出ると、パート先の人の悪口も言うことになる。 悪口を言える総時間が変わる訳じゃないので、相対的に父親の悪口は減るかもしれないが、それだけ。 娘がずっと悪口を聞かされるのは変わらないのだ。

そう言えば、子供の頃、俺もちょいちょい母から 「お父さんのようになっちゃダメ」 なんて言われてたんだよなぁ。 この相談者のように父を嫌いになることはなかったけど。

その父も、アルコール依存からアルツハイマーと、頼まれてもそうはなりたくない進化を遂げてしまった。

俺も漫画でも描くかな。