テクニシャン?

府中駅を出たら、ポツポツと雨が降っていた。

カシンカシンと音がして、見上げると、壁面に吊り下がった男が窓の清掃をしていた。 清掃が終わった窓も、これからの窓も、同じように雨に濡れて汚れるのだろう。

せっかく、空と俺との間に今日も冷たい雨が降っているのだから、 「あなたが笑ってくれるなら、わたし、小悪魔になってあげる」 なんて人がいないかな。 ガーターベルトの似合う小悪魔がいいな。

「人差し指を、ここに入れて」

「こう?」

「もっと奥まで」

「このぐらい?」

「そう。 指、動かして」

「……」

「あ、もっと上下に、あたるように」

「こう?」

「そう。 もっと速く」

「もっと?」

「もっと。 もっと強く」

「……」

「きつい?」

「うん、かなり」

「でも、もう、あ、もうすぐ」

などと、小悪魔じゃなくて白衣の天使と、昼間から。 本当はもっと丁寧な言葉遣いで。

今日はVDT健康診断。 ディスプレイを見てキーボードを叩く職業のための健康診断らしい。 で、タッピングという項目があって、機械につっこんだ指を、上下に30秒間トタトタ動かすんだけど、これがかったるくて。 他にも視力検査や、眼圧の検査など。

視力検査。 恐ろしいことに、裸眼視力が 0.1 を切っていた。 ちょっと乱視の気もあるらしい。 タッピングは、良かったらしい。 終わった後で看護婦さん、 「すごいのね、よかったわよ」 と言っていた。 本当はもっと事務的な言葉遣いで。