素描礼賛
八王子市夢美術館に行ってきた。
現在
素描礼賛 - 岸田劉生と木村荘八
を開催中。
展示は、展覧会のタイトルの通り、二人の画家の素描がメイン。 素描的な挿絵や表紙のデザインもあった。 ちゃんと彩色した作品もいくつか展示されていたが、素描作品とは結構な断絶があるように見える。 クリムトやモローの展覧会で見た素描は完成までの道の途中という感じだったが、今日見た素描は、進化の系統樹における隣の枝という感じだった。
と、二人を一括りに扱っているが、この二人の方向性も少々違う。
岸田劉生
彼は素描について、
美の根源は素描にあって、色は添え物
と語っていたのだそうだ。
何にどう色を着けるかの 「何に」 の部分、つまり表現したいものの骨格がイメージできないと色の着け様もなくて、その意味では美の根源は素描なんだろう。 そこを素描として具現化しないままに傑作を作り上げる人もいるのかもしれないが、まず素描レベルで練った方が、作り手としては楽だし確実だよな。 色を塗り始めたら、ここはやっぱりこうしたいなんてことが出てくるとしても。 というか絶対出るだろうけど。
なんて思いながら見た彼の素描作品だが、本当に素描として描いているものからは、あまりセンスが感じられない。 本の表紙のデザインとか、むしろ駄目な方。 しかし何かしら塗ると、それが単色の濃淡でも、俄然らしさが出てくるのが面白い。 やっぱり塗らなきゃ駄目な人なんじゃないのかね。
かちかち山の表紙は良かった。 復讐に燃える兎が熱い。
天地創造の銅版画3作も、今日の展示品の中では異色の作風で目立っていた。
有名な麗子像のシリーズは、元や宗の時代の中国絵画に影響されて描いたものなんだそうだ。 その始まりの作品である 寒山風麗子像 が展示されていたが、こんな肖像画を描かれる娘がちょっと気の毒になった。 写真で見る麗子は全然別物だからね。 まあ別物ってだけで、決して可愛くはないんだけどさ。
もっと大きくなった娘の肖像画が全然違う画風で、つまりはまともに描かれていた。
やればできるじゃないか。
なんて思いながら読んだ解説が酷かった。
絵を描いた後、娘にわざわざ
お前の頬骨はもっと出ているが、今日はその辺を補正して美人に描いてやった
なんて言ったのだそうだ。
娘が本当に気の毒になった。
木村荘八
こちらは、素描はもちろんだが挿絵も多かった。
彼は
挿絵も素描も本格的な絵画だ
と言ってたそうで、美の根源だが完成品ではない扱いの岸田劉生とは、素描が大切という点では一致するも、素描の位置付けはかなり違うらしい。
実際、大量に展示されていた挿絵や素描は、岸田劉生のものよりも、作品として成り立っている感はある。
雑な筆使いも、その雑さの故によりイメージ広がる様な。
彼は、まず骨格を考慮した裸の状態の人を描き、そこに服を着せていくという描き方をしていたそうだ。 だからって訳でもないだろうが、手や足などのパーツの習作も多かった。 立ったら、座ったら、中腰だったら、といった様々な姿勢の中での脚とか。
手塚治虫は、そういうのをもう記号化と言えるレベルまで進めて漫画部品表みたいなものを作っていたそうだが、木村荘八はそこまでは至ってないらしい。 短いサイクルで大量に描く漫画家と、もっと時間の自由が効く画家との違いか。
裸婦の素描も多かったが、現代を生きる俺の目には、腕よりもモデルの方が見るに耐えない状況だった。
このモデルを描いている画家はどんな気持ちだったんだろうと思っていたら
猫背短足の開き直りから粋が生まれた
なんて解説が。
こいつも結構酷い。
とまあ、なんだかんだで素描というものの説得力が積み上がってきていたのだが。
最後の方に出てきたちゃんと色を塗った作品 歌妓支度 が圧倒的で、それまでの挿絵や素描がすっかり霞んでしまったんだよな。 なんかもう本当に素描礼賛する気があるのか疑ってしまう展示構成。 これでいいのだろうか。
+
美術館からの帰りに、昨日間に合わなかった銀行に行ってきた。
給与振込用の口座を作るのだが、これが完全新規ならネットからできるのに、別支店に口座がある場合は口座を作る支店の窓口じゃないと駄目という謎仕様。 何故なのか。 まあ、銀行だからだよな。
なんて気持ちで久しぶりに行った銀行窓口だが、窓口業務の進化には驚かされた。
まず受付でタブレット端末を渡されて、必要事項はそいつから記入。 入力結果は窓口担当の端末から参照できて、いや、できないと意味がないけどさ。 こちらに向けて確認することは全て大きなディスプレイに表示され、必要に応じて画面にタッチしたりソフトウェアキーボードから入力したりで手続きが進んでいく。
「このカードは海外でも使えるタイプのものですね」
「ああ、言われて思い出しました。 そうです。 海外出張に行くときに変えました」
「その機能はもう廃止になってるんですよ。 代替機能がこちらなんですけど、今後、海外に行かれることはありますか?」
「ないですね」
「じゃあこちらを…」
なんて感じで、すっかり忘れていたあれこれも棚卸し。
最後に署名を電子サインとして専用の端末から入力するのだが、これだけが手書き。 いやまあ、手書きじゃないと意味がないんだけどさ。 慣れないデバイスのせいで、字がもうどうしようもない酷いものになってしまった。 やり直したいが、満足できるまでやり直したらきっと日が暮れるだろう。
手続きはとてもスムーズだったのだが、別支店の口座のカードもiD付きのに変えたりとか、やることは結構たくさんあって、気がつけば閉店の3時を過ぎていた。 入り口のシャッターは降ろされていて、店内に客は俺一人。 一通り終わって帰るときは、非常口みたいなところから警備員に送り出された。
で、ちょうど家に帰ったところで、銀行から電話がかかってきた。 住所の入力が間違っていたので訂正に来てくれと。 最初のタブレット端末での入力で間違っていたらしい。 嗚呼…。
+
表現の不自由展について報道するときは、慰安婦像ばかりで特攻隊や天皇に対するヘイト作品には全く触れなかったNHK。 そうした批判を躱すためか、最近は、何だか分からないレベルで一瞬だけ映してみたり、天皇をコラージュした作品と言ったりするようになった。
が、名古屋市長の河村君が抗議デモにきた時のプラカードにあった天皇関連の文言
陛下への侮辱を許すのか
は、NHKのカメラを通して見えるのは
「許すのか」
のみで、前段は全く非表示状態。
更に
「公金の不正使用を認めるな」
のテロップが被さって、抗議デモの連中が問題とするポイントがそこにあるようなミスリード。
さすがNHK。 他局はどうなんだろうね。
河村君は、次があるなら、服や顔にペイントして行ってほしいものだな。 耳なし芳一状態で、是非。