女王か奴隷か

社会性を持つ昆虫、具体的には蜂や蟻、白蟻だが、これらの社会の頂点には女王がいる。 女王は、周囲の労働階級とは別種レベルで体の大きさが、種類によっては体の作りまで違うのだが、実は遺伝的には何の違いもない。 あの体の違いは、何を食べて育ったかの違いだ。 女王は、生まれた時から特別扱いで良いものを食べて女王らしく育てられ、そして女王になる。

しかし中には、女王になるまでは皆同じで、女王になってから体が女王らしく変化する種類もあるのだそうだ。

インドクワガタアリの生態について。 NEWSWEEK から。

脳の大きさを変化させるめずらしい生態が今回明らかになったのは、インドクワガタアリと呼ばれる体長2.5センチほどの大型のアリだ。 大きな眼とまるでクワガタのような大アゴが特徴的で、インドの湿潤な平野部に多く生息している。 体長の4倍ほどの距離をジャンプして獲物を狩ることから、ジャンプアリの別名でも呼ばれる。

脳の衰退の前提として、まずはそのユニークな繁殖システムを把握しておきたい。 多くのアリの種では、女王アリとなるべき個体は孵化直後から決まっている。 ところがインドクワガタアリの場合、すべてのメスのアリにチャンスがある。 コロニーの大多数のメスが、女王昇格の機会を虎視眈々と狙っている状態だ。

これまで女王だったアリが死亡した時点で、次期女王の座を賭け、メスたちは激しい争奪戦を繰り広げる。 鋭いアゴを相手に突きつけて攻撃し合い、耐えた者だけが勝者となる。 多い時でコロニーのメスの7割ほどが闘いに加わり、争いは最長で40日間ほど続く。

最終的に5体から10体ほどの個体が勝ち抜き、産卵能力を有する「ゲーマーゲート」と呼ばれる集団となる。 こうして働きアリから生殖能力を持つ新たな女王が誕生することで、巣の全滅を防ぐしくみとして機能しているのだろう。 アリの種類にもよるが、ナショナル・ジオグラフィック誌は一般的なアリのコロニーであれば、女王アリの死に伴って巣も滅びゆく運命にあると指摘している。

脳を衰退させて卵巣に投資

このようなめずらしい女王制を敷くインドクワガタアリだが、女王に昇格した個体にユニークな変化が起きることがこのほど判明した。 脳の一部を失い、代わりに産卵能力を拡充するのだ。 この不可思議な実態は、ジョージア州立ケネソー大学のクリント・ペニック生物学博士らチームによる研究で明らかになり、科学機関誌『英国王立協会紀要B:生物科学』上で4月14日に発表された。

働きアリからゲーマーゲートに昇格した個体は、その脳の容積を19%から25%ほど失う。 縮小に伴って働きアリとしての特性を失い、毒液の生成が停止するほか、狩りにも出ず、侵入者の撃退もせず、繁殖行動に専念するようになる。

研究を主導したペニック博士はニューヨーク・タイムズ紙に対し、レーザーを使った画像計測技術により、脳のどの領域が縮小しているのかを割り出したと説明している。

最も衰退していたのは視葉と呼ばれる領域で、これは主に視覚情報を処理する部分だ。 博士は理由について、光の届かない巣のなかで産卵に専念することになるため、視覚信号を処理する必要がなくなるためではないかと述べている。

視葉に加え、認知的タスクに関連する脳の中心部も大きく縮小する。 狩りを行う際には高度な認知能力が求められるが、女王アリの任務には必ずしも重要ではない。 脳はエネルギー的コストを多く要する器官の集まりであるため、不要となった領域を縮小させることは、生命維持にとって合理的な選択となり得る。

脳の一部を縮小させたゲーマーゲートは、代わりに卵巣を体積比で5倍ほどに発達させる。 かつて脳の維持に使われていたエネルギーを転用し、生殖関連の機能の拡充に充てているのではないかと見る専門家もいるようだ。

いざとなれば脳の回復も可能

さらに不思議なことに、この変化は可逆的なのだという。 研究チームはさらに分析を進め、ゲーマーゲートの個体が女王として立場を失った場合、脳の体積が回復することを突き止めた。

チーム実験のため、30体ほどのゲーマーゲートをそれぞれの巣から3〜4週間ほど隔離した。 すると、すべての個体が3日以内に産卵を行わなくなり、女王役としての機能を停止したことが確認された。 コロニーの他の個体との社会的接触を断たれ、働きアリから餌を運ばれるなど女王役としてのケアも受けなくなったことで、ゲーマーゲートとしての特性を喪失したと見られる。

次に、これらの個体を巣に戻したところ、「取り締まり」と呼ばれるコロニーの自浄機能が確認された。 コロニーの働きアリたちは、卵巣が部分的に発達してはいるが女王アリではない個体を発見すると、深刻なケガを負わせない程度に噛みついて攻撃する。 こうしたストレスがゲーマーゲートに刺激を与え、その体に変化を促すものと研究チームは考えている。

取り締まりを受けた個体は脳のサイズが再び増加し、働きアリとほぼ同等の大きさまで回復した。 活動パターンも変化し、餌を探し求めて動き回るなど、一般の働きアリとよく似た行動が観察されたという。 一般に、餌の収集には高度な認知能力が求められる。 英ネイチャー誌は、このように脳のサイズが回復するおかげで、女王の立場を追われた個体が再び働きアリとして生き延びられるのではないかと見ている。

これまでにも一部の動物は、脳の大きさに季節的な変動を生じることが知られてきた。 しかし、これは比較的長寿の脊椎動物に限ったものだ。 著名な例としては、スズメの仲間の鳴きん類などが、繁殖や冬眠などに備えて脳の大きさを変えることが知られている。

だが、可逆的な変化には相応のコストがかかるため、短命の昆虫にはあまり見られない。 ミネソタ大学のエミリー・スネル=ルード進化生物学准教授はナショナル・ジオグラフィック誌に対し、「このレベルの柔軟な可逆性は聞いたことがありません」「(ミツバチなど脳を肥大化させる例はあるものの)神経的な投資先を一旦シフトし、さらに後に元に戻すとなると、完全に別の話です」と驚きをあらわにしている。

研究を主導したペニック博士は、将来的に人間の脳神経の再生への応用を期待しているようだ。

働き蟻は、女王になりたいと思っているのかね。 暗い洞窟の奥で、何も見ず、何も考えず、肥大化してただ卵を産み続けるだけの女王に。 空の青さと風の気持ちよさを知ってしまった働き蟻が。

産卵奴隷

このインドクワガタアリの記事を読んで、最初に思ったのがこれ。 エロ漫画に出てくる、ゴブリンの苗床にされる女のような扱いじゃないかと。

いやむしろこっちの方向から解釈したほうがスッキリするだろう。 攻撃に耐えたものが勝ちではなく、攻撃できたものが勝ち抜ける。 それが女王争奪戦。 いや女王押し付け戦。 或いは産卵奴隷決定戦。

遺伝的に差異がないので、遺伝子の継続という観点からは、誰が女王になっても同じ。 であれば、現時点で働き蟻としての能力が最も低い個体を選ぶのが、効率的な運営という観点からは正解なのだから。

脳が萎縮してしまうのも、産卵役のメンタル保護のためじゃなかと思えてくる。 保護というか、産卵を続けることに疑問を持たなくなるとか、もっと積極的に産卵が快感になるような変化が起きるのかも。

研究を主導したペニック博士が期待しているのも、記事にあるような 人間の脳神経の再生 ではないのかも。

この薬を打つと妊娠出産したくなります。

そんな薬。 もっと言うと、それしか考えられなくなる薬。 ますますエロ漫画の世界。 まあ実際そうだとしても、そうだとは絶対に言えないだろうけどさ。