笑顔

散歩。

河原のグラウンドで、ノックしていた親子。 子供は小学校の4年生ぐらいか。 父親はかなり手加減して打っているのだが、それでも子供はなかなか上手く捕れない。 トンネルしては、グラウンドの外の草原までダッシュ。 野球と言うよりはむしろ陸上のトレーニングだな、と思いながら見ていた。

「もう疲れたか?」

「ううん、まだ平気」

「よし、じゃあいくぞ」

キンッ!

またトンネル。 グラウンドの外まで転がっていくボール。 追いかけていく子供。

と、犬が走ってきて、ボールを咥えた。

「あらあら、だめよ」

陽気な声で、小太りのおばさんも駆けて来た。 犬の散歩らしい。 ボールを咥えたままの犬が、おばさんに駆け寄る。

「すいませんねぇ」

犬からボールを受け取ったおばさんが、子供にボールを投げる。 そのボールが子供に届かずゴロになったもんだから、また犬がダッシュ。 子供よりも先にボールをキャッチして、おばさんのところに駆け戻る。

「あんたが取っちゃ駄目でしょ」

犬に言い聞かせながらボールを受け取って、おばさんがもう一度投げる。 またゴロ。 犬がダッシュしてキャッチ。

「また犬に取られたのか。 わははは」

父親が大笑いしている。 子供も笑っている。

「ほんとにすみませんねぇ」

と、全然すまなくなさそうな顔でおばさんも笑っている。 犬もなんだか得意げな顔で楽しそう。

気が付けば俺も笑っていた。 風が気持ちいい。